楊名時太極拳で行う「八段錦」は、中国の古くから伝わる気功の一種ですが、楊名時先生が太極拳の大切な準備運動として取り入れたことには、大きな意味があります。しかも、八段錦は力強く行う「武式」と柔らかく行う「文式」がありますが、楊名時先生は「文式」を選んでおります。
その理由は、八段錦・太極拳は技の競い合いではなく、その日の自分の心と体の対話、つまり「心身の声を聞きことが一番大切」という持論をお持ちだからです。
まず立禅で、深い呼吸により心を静めます。そして八段錦では、呼吸に合わせてゆっくりと動きます。この時大切なのは、静かな状況の中で動くこと。音楽や騒音があったりすると気が散ってしまって、自分の内面に入ることができにくくなるためです。
呼吸を導き手として、ゆっくりと体を動かし耳を澄ましていると、心配事や気になっていることが消え、心が安らかになっていきます。心が安らかになると、体調のちょっとした変化にも気づきます。
また、忙しい日常から離れて、心と動きと呼吸が一体となった時、体の芯が解放され、気持ちよくなり自分の心との対話を愉しむことができるのです。
楊名時八段錦*太極拳が気功太極拳といわれる所以は、ここにあります。
楊 麻紗記
2021/8/29
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