脳のトレーニングと自然との接点を忘れないために俳句を始めて、はや25年になった。太極拳の指導を終えて月1回の句会に出るのが精一杯で、主に句を作るのは句会場までの電車の中であるため、成績は一向に上がらない。たまに特選になったりすると、大喜びして翌日の太極拳の指導までがうまく行くのである。太極拳の仲間とは違った「詩」の仲間との繋がりの中で、私は言葉の感性を磨くと同時に、自分の心を解放しているように思う。その意味で、太極拳と俳句は同じ位置にある。
さて、7月の句会で「西瓜」の即興句を作ることになった。賑やかに夕食をとっていた仲間が真顔になり、あれやこれや考え始める。私も西瓜、西瓜と頭を巡らしいるうちに、楊名時先生が無類の西瓜好きであることを思い出した。丸の西瓜は重く、冷蔵庫の中で場所をとるので、私は半分か四つ切りのものを買うのだが、楊名時先生は丸の西瓜が主だった。西瓜は体のむくみをとる利尿作用があり腎臓病の妙薬として知られている。それは95%が水分であるだけでなく、多くの栄養成分がバランスよく含まれているからである。蒸し暑い日本の夏は西瓜にかぎるといって、楊名時先生は嬉しそうに食べるのである。
スイカを漢字で「西瓜」と書くは、西瓜の原産がアフリカで西の方から伝わってきたため、カボチャは南のカンボジヤから伝来したので「南瓜」と書くことも、楊名時先生から教わったのである。楊名時先生が亡くなられて丸12年。一人暮らしの私が今買う西瓜は、カットされたもの。その西瓜を仏壇に供えて、楊名時先生を偲んでいる。
因みに句会で作った私の即興句は
* * * * *
亡き夫の好みし西瓜今日も買ふ
楊 麻紗記