(20)深大寺と時雨茶屋

6月に入り、木々の青葉が日に日にその色を深めています。調布駅からバスで20分程の武蔵野の面影が残る緑に囲まれた場所に、深大寺があります。深大寺は浅草・浅草寺に次ぐ都内第二の古刹であり、豊かな湧き水の出ることでも知られています。

楊名時先生はこの深大寺が大好きでした。5月の連休と紅葉の頃にはよく家族で出かけました。自宅が総武線の東中野でしたので、30分前後でいける近場だったことも理由の一つです。

深大寺参拝と境内周辺の散策を終えた後、楊名時先生が必ず立ち寄る所が「時雨茶屋」です。ここで温かい蕎麦と野草てんぷらを食べるためです。この注文を変えたことは、一度もありません。

その理由を聞くと、楊名時先生が講師を務めるアジア・アフリカ語学院が近くにあり、生徒を連れて何度も食べに来て、美味しかったからだそうです。野草は地元で採れる物を使ってるとのことで、時雨茶屋の名物になっています。

楊名時先生は大の蕎麦好き。健康のために温かい蕎麦しか食べませんが、それをすすりながら「美味しいね」と破顔一笑する姿が、今でも忘れられません。老舗の時雨茶屋が閉店したことを、最近知りました。楊名時先生も天国で淋しがっていることでしょう。残念ですね!

楊 麻紗

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