(5)テレビ出演

残暑お見舞い申し上げます。

 今年は全国で記録的な残暑が続いておりますが、皆様如何お過ごしでしょうかお伺い申し上げます。お待たせいたしました。楊名時先生のエピソードの続きを、ご紹介いたします。

   昭和46年頃には、楊名時先生の太極拳をマスコミが取り上げるようになりました。中山千夏氏や黒柳徹子氏、久米宏氏らが司会を務めたワイドシヨーにも出演しました。中でも、野末陳平氏が司会するテレビに出演したときのことです。与えられた時間は2分。この短い時間で太極拳の紹介をして欲しい、と言うのがテレビ局の要望でした。

   いろいろな打ち合わせの後、いざ本番!となった時、楊名時先生はゆっくりと「十字手」を行ないました。予備姿勢の十字手だけで2分は過ぎてしまい、肝心の太極拳の型を紹介することはできませんでした。打ち合わせ通りに行かなかったことを、番組終了後に野末陳平氏は苦笑しておりました。

   テレビ局を出るときに、「どうして打ち合わせどおりにやらなかったのですか?」とお尋ねすると、楊先生は泰然として答えられました。

  「2分で太極拳を紹介するのは無理だよ。太極拳はゆっくりやる所に意味がある。その特徴を曲げて速くするのはいけないよ」と。噛んで含めるようにおっしゃった楊名時先生のお姿を、今でもはっきりと覚えております。そして、どんな状況下に置かれても太極拳の本質を忘れてはいけないと言う訓えの深さを、改めて感じております。

楊麻紗

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