(7)三笠宮崇仁殿下

昭和46年頃、日本武道館に入会された三笠宮崇仁殿下との思い出も印象に残るものでした。私は三笠宮様のお茶の接待役を仰せつかりましたが、三笠宮様はとても気さくな方でしたので、私はあまり緊張することはありませんでした。

   教室で、前半の稽古が終わってから楊名時先生のお話を聞かれるとき、三笠宮様はいつも背筋を伸ばし、決して姿勢を崩すことはありませんでした。そして、熱心にメモをとりながら、楊名時先生のお話に頷いておられたお姿が忘れられません。

   スキー、ダンス、乗馬などスポーツ万能の三笠宮様のお体はとてもお柔らかく、太極拳も柔軟で素直な演舞をされていました。昭和47年6月27日、ホテルニユーオータニで開かれた楊名時先生『太極拳』出版記念会に、三笠宮様は妃殿下とご出席下さいました。楊名時先生と私たちは、大変名誉なことと感激したのを覚えております。

警備の問題もあって、三笠宮様は3年位で日本武道館に通えなくなりましたが、楊名時先生とはその後数回会食をされたと聞いております。

   それから約30年の歳月が流れましたが、三笠宮様と楊名時先生とのご縁は切れておりませんでした。平成16年10月9日に行なわれた楊名時先生「傘寿のお祝い会」に快くご出席をご承諾され、日本武道館で楊名時先生が話された当時のメモをご披露し、出席者から感嘆の声が上がりました。そして、傘寿のお祝い会から1年後、誰も予想していなかった悲しい出来事が起こりました。それは、楊名時先生の急逝です。平成17年9月29日、帝国ホテルで行なわれました「楊名時先生お別れ会」に、三笠宮様はご出席下さいまして、楊名時先生と最後のお別れをされました。

昭和47年6月 日本武道館(畳の教室)に於いて

楊麻紗

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