(44)最高のものは一回

 俳優の高倉健さんが11月3日、文化勲章を受章されました。フアンの一人として、心からお喜び申し上げます。

昨年の9月8日、NHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」を見ました。高倉健さんの映画<ありがとう>の撮影現場を追いながら、彼の俳優としての仕事ぶりを紹介したもので、なかなか見応えがありました。高倉健さんは日本の寡黙で耐える強い男を演じてきました。あまりテレビにはでず、彼の考え方などはあまり知られていませんでしたが、彼の仕事に対する姿勢が分かりとても面白かったです。ぽつりぽつり語る言葉がずしりと胸に響きました。そのいくつかを紹介します。

 最高のものは1回。1度きりを生きる。役を演じることはテクニックではなく、生き方が芝居に出る、特に映画では。俳優は体が資本。そのために体重をコントロールし、何十年と変わらない。撮影中は座らない。現実の生身をさらし、心に感ずるものを演じ、心によぎらないものはできない。同じものはできない。だから本番は1回きり。

 彼は81歳とは思えないほど姿勢がよく元気なのは、日本のリーダーと呼ばれた人の生き様を描いた本を読み、自分を律してきたと語っていました。

 楊名時先生も太極拳の稽古の姿勢は、高倉健さんと同じでした。1回の稽古は1回きり、その一回にすべてをかけて行うことを力説しました。そして、本を作るときの写真も、ビデオを作るときの演舞も1回きりで、2度3度の取り直しはしませんでした。それだけ気持ちが集中しているということです。

楊 麻紗

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