(23)太極拳の呼吸は吐き切らない

今年の9月初旬、脱サラして故郷の桐生に帰り、天蚕による織物に挑んでいる人を紹介したNHKの番組がありました。「天蚕」という聞きなれない言葉に興味をそそられ、その放送を見ていると、蚕が糸を吐きながら繭を作るシーンが映し出されました。初めて見る蚕の様子に見とれてしまいました

天蚕は別名「山繭」と言われ、クヌギやナラを食べ、夏ごろに黄緑色の繭を作り、その天然の色の糸で織った着物が薄緑色でとても上品なものでした。

同時期に楊名時太極拳のある書物に、「太極拳の呼吸は息を吐き切ります」と書かれているのを目にし、驚きました。なぜならば、「太極拳の呼吸は、いつも楽に、細く長くゆったりとして、息を詰めたり切ったりしてはいけません」と楊名時先生に指導されていたからです。中国では昔から太極拳の呼吸の要諦として「春蚕吐糸、連綿不断」の言葉があるので、肝に銘ずるようにと教わりました。

呼吸法には色々なやり方があり、吐き切る利点もあるのですが、太極拳は意識を集中させながらバランスをはかる全身運動ですから、あまり呼吸に捉われすぎると窮屈になり、柔らかくゆったりとした動きが乱れてしまいます。


                                 楊 麻紗

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