(36)優しいまなざし

楊名時先生は太極拳を稽古する時、まなざしの優しさを力説しています。昔から目は心の窓といわれます。悲しい時は悲しい目に、怒りや不満の時は目付きがきつくなりますので、特に指導者は目付きに気をつけ、笑顔で太極拳を行うことが大切です。指導者の笑顔と優しいまなざしは人を癒し、きつい目付きは人を緊張させます。

2008年「国宝薬師寺展」が東京国立博物館(上野)で開かれました。日光・月光菩薩立像の東京初公開とのことで、大変好評を博しました。私は奈良で何度も楊名時先生と拝見していたので、上野には行きませんでしたが、新宿の駅で公開を知らせる大きなポスターが目に留まりました。それは日光菩薩と月光菩薩が向かい合ったもので、次のようなキャッチコピーが付けられていました。

日光菩薩には「優しいまなざし」、月光菩薩には「清らかなまなざし」です。奈良で拝見した時は両菩薩とも同じようなまなざしと思っていたのですが、よく見るとちがうのです。日光菩薩の方は顔が少しゆるみ、優しい目付きでした。

以来、私は太極拳の教室に入る時、日光菩薩の優しいまなざしと楊名時先生を思い浮かべています。

楊 麻紗

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