太極拳との出会いは、忘れもしない8年前の5月の事であった。
或るシンガーソングライターの「耳鳴りで作曲活動が出来ず悩んでいた時に、勧められた太極拳。そして、稽古をしていくうちに次第に耳鳴りと付き合えるようになり、7年ぶりに作曲活動が再開できるようになった」との喜びのテレビ映像であった。
丁度、耳鳴りに大変苦しんでいた私にとっては、全く思いがけない朗報。番組が終わるや否や、早速テレビ局など数箇所に電話を入れた結果、健康法・養生法の太極拳は楊名時太極拳である事を知る。たまたま、太極拳に通っていた友人に問い合わせると、楊名時太極拳という事が分かり、小躍りして喜んだのを鮮明に覚えている。
その頃の私は「キーン」という金属音のような耳鳴りが、日夜続いている上に、耳閉感が強く睡眠不足に苛まれていた。食欲もなく疲労困憊の毎日。「電車で稽古に通うのは無理では?」と家族も心配する程であった。辛さから逃れたい一心で、私は太極拳の指導を受ける事を決意し入会。
麻紗先生をはじめ助手の先生方が皆優しく接して下さり、少々の疲労はあったものの休む事なく通い続けられた。8日目頃からは厚い蓋をしたような不快な耳閉感が、不思議に薄らいでいくのを実感した。期待以上の早い効果に、私は驚きと嬉しさでいっぱいになり、天にも昇る心地で、今も稽古に励んでいる。
耳鳴りはまだ続いているが、時には心地よいリズムとさえ思う様になった。一病も二病も抱えている70歳近い私。だからこそ、師の教えの「心を動かし、気を動かし、体を動かす」を深く刻み、太極拳を通して心と技を磨くべく努めている。
縁あってご指導頂いている楊麻紗先生やお仲間達との輪を大切に、これからも太極拳を楽しみながら稽古を重ね、長寿へとつなげたいと願う私である。
吉野 テル
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