楊名時先生が亡くなられて10回目の唐招提寺奉納演舞が、3月27日(日)に行われました。奈良・西ノ京駅に着いた頃の天気は曇りで、ひょっとすると雨になりそうな予感のする空模様。桜は三分咲き。地元の平山裕子師範が手配をしてくださった唐招提寺近くの食事処「大納言」で昼食をとっていると、ぽつぽつと雨が落ちてくる。しかし、だれも不安な顔はしてない。皆演舞の時は必ず晴れると信じている。今まで何度も奇跡に近い経験をしているからである。昨年は八段錦を傘をさして行った後、雨が上がり太極拳を舞ったのである。
午後1時過ぎに唐招提寺の山門をくぐる時は、日が差し本堂裏に仲間50人が参集すると、空は晴れ渡り風もなく、半袖の人もいる絶好の演舞日和となりました。前日の雨で境内は洗い清められ、清清しい気場のなか千年の仏像に見守られ、鑑真和上と楊名時先生に感謝を込めて太極拳を舞いました。舞い終わる頃、空には鳳の羽のような絹雲がたなびき、奉納演舞を喜んでいるように鳥が鳴き、まるで西方浄土の中にいるようでした。一期一会の最高の演舞でした。
この後、藪椿の咲き乱れる道を通り鑑真和上廟のお参りに向かいました。ご廟のあるヒノキの庭は緑のコケが生え、木漏れ日に映えて静謐な美しさをかもしていました。参加者一人ひとりが線香を立てて、和上様をお偲びしました。
奉納演舞の後、地元、大阪、東京の人たち20人ぐらいでお茶会を大納言で開いていると、先ほどまでの晴天がウソのように一転空が搔き曇り、大粒の雨が降り出しました。1時間ぐらいの交流を終え、雨のなか散会しました。東京の私たちは薬師寺に立ち寄りと、雨を帯びた風情ある薄墨桜が満開でした。また、近鉄奈良駅に帰る電車の車窓から、平城京跡の空に掛かる虹をも見ることができました。虹はすぐに消えましたが、まほろばで見る虹はとても幻想的。
唐招提寺参拝・奉納演舞は、毎年不思議な体験をさせられるが、同時に神仏のご加護を感じるものでもありました。
楊 麻紗記
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