(9)抱一龕道場

楊名時先生が昭和49年の冬に、日本武道館を去られてからまもなく、抱一龕(ほういつかん)道場で楊名時先生の太極拳の指導が始まりました。抱一龕道場は故中山正敏先生(元日本空手協会主席師範)の個人の道場で、中山正敏先生が失意の楊名時先生を暖かく迎え入れて下さったものです。楊名時先生は昭和18年に留学生として来日されて、京都大学政治学科に入学されました。卒業後上京され、東京中華学校の校長を勤められるかたわら、日本空手協会で空手を中山正敏先生から指導を受けました。楊名時先生は日本の武道を好みましたが、特に空手は大好きで、中山正敏先生のことをとても尊敬しておりました。その中山先生の道場で太極拳の指導が出来ることを、楊名時先生は非常に感激し、又恩義に感じておりました。楊名時先生は空手七段です。

  昭和62年に中山正敏先生が逝去された後も、道場に通うときは恩師の好物だったメロンを携え、仏壇に供えるのが常でした。その時は、秋子未亡人と中山正敏先生の思い出をしみじみと語り合ったと伺っております。

  メロンを見ると、私は楊名時先生と中山正敏先生との師弟の絆の強さを感じます。

楊麻紗

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